青森県南部は、隣接する岩手県北部とともにかつては南部藩の領地で、同じ食文化の圏内にありました。
南部藩の時代から親しまれてる、鶏肉を使った郷土料理が「ひっつみ汁」です。
昔から青森県の太平洋側は水田の少ない山間地域で、米などの農作物があまり収穫できませんでした。
夏には「やませ」といわれる太平洋からの冷たい風が吹き込み、気温が下がり稲や作物の育成に
悪い影響を与えたからです。米はめったに食べられない貴重なものでしたから、
「しかたなしの米飯」といわれるくらいでした。
そこで食生活の中心となったのは「やませ」などの悪条件に比較的強い、麦・そば・粟・ひえなどの雑穀類でした。
当時の人々は雑穀中心の食材に工夫を加え、さまざまな雑穀料理を考え出しました。
そのひとつとして水でこねた小麦粉を、ひっつまんで(ひきちぎっての方言)鍋に入れることから
名付けられたのが「ひっつみ汁」です。
ご飯の代わりや、農作業の合間の「小昼」(こひる、15時頃の食事)に食べられていました。
やがて旬の野菜や鶏肉が加わり、季節によってはクジラ・ウサギ・キジなどの肉、魚やカニなども
使われるようになりました。
にんじん・ごぼう・長ネギ・きのこ・大根などがたっぷり入って、鶏肉もじっくりと煮込まれた郷土料理です。
近年では、青森名産の地鶏「シャモロック」を使った「ひっつみ汁」も人気です。
厳しい自然の中から、先人たちの知恵と工夫によって作られた「ひっつみ汁」は
特に冬の寒い時期にみんなで囲炉裏を囲んで食べてきた伝統料理であり
現在でも各家庭や地域であったか料理として親しまれています。
「ひっつみ汁」のレシピ
<材料 4人分>
・鶏モも肉・・・250g
・にんじん(中)・・・1/2本
・ごぼう(中)・・・1/2本
・長ねぎ(大)・・・1/2本
・小麦粉・・・適量
・水・・・適量
・サラダ油・・・適量
・しょうゆ・・・適量
・塩・・・適量
・鶏ガラだし汁・・・3カップ
<作り方>
①小麦粉に水を少しずつ混ぜ、耳たぶくらいのかたさになるまで30分ほどしっかりこねたら、一晩寝かせます。
②鶏肉は一口大・にんじんはせん切り・ごぼうはささがきにし、水に浸しておきます。 長ねぎは斜め切りにします。
③鍋に油をひき、鶏肉を炒めます。表面に火が通ったらよく水を切った、にんじん・ごぼう・長ねぎを加えてさらに炒め、しょうゆと※鶏ガラでとっただし汁を具材が浸るまで入れ火にかけます。
④鍋のアクをとり、しょうゆ・塩で味付けをします。
⑤④に①の生地を一口大にちぎり薄く伸ばし、入れます。
⑥火が通ったら出来上がりです。
鶏ガラ(食用の肉を取り去った鶏の骨)でとっただし汁のとりかた
<材料 1リットル分>
・鶏ガラ・・・1羽分
・長ネギ(青い部分)・・・1本分
・しょうが・・・薄切り大2枚
・水・・・7カップ
<作り方>
①鶏ガラは水でさっと洗い、血合いなどを落とします。
②材料すべてを鍋に入れ、強火にかけます。
煮立ったらアクを取り、弱火にして30分~1時間程煮込みます。
③キッチンペーパーを敷いたザルでこしたら出来上がりです。